親友と交わした10年越しの約束
10年前。
大学1年生の年の11月の終わりだった。
その日は確か、昼ぐらいから暇だった。
でも夜から飲み会があるから帰れもせず、時間を持て余していた。
わたしとその子は、散歩に出た。
大学の外、行ったこともない方面へ。
たぶん、すぐ帰るつもりだったんだろう。
お財布も持たずに、所持金はポケットに入っていた5円玉だけだった。
でも、思った以上に散歩は楽しくて。
知らない道、知らない公園、そこにいる、知らない子供と遊んだり。
そんなことをしてたら、ずいぶん遠くまで来てしまって。
帰り道もわからずに、何時間も経っていた。
当時はまだ2人ともガラケーだった。
今思うと、「つんだ状態」だと言えるのかもしれない。
でも、当時はそれが楽しくて可笑しくてたまらなかった。
キャッキャと笑いながら、帰り道を探した。
結局、なんとか迷いながら、最後には大学の大きい文字(建物?に入ってる大きい文字?)を遠目に見つけて、2人で大喜びして飛んで帰った。
わたしとその子は、その日にひとつ、約束をした。
「10年後もまた、今日みたいに散歩しようよ」と。
2人ともテンションが上がっていた。
だから、そんな約束ができたんだ。
でも大学生は、もうほとんど大人である。
約束を交わすときに「10年後なんて、無理かもしれないけどね」と心の中でつぶやいた。それぐらいのことは、わかっていた。
それはきっと、2人とも同じだったと思う。
でも、お互いそこで、その時のガラケーの10年後に、スケジュールを入れた。
————時は流れて、10年後。
来週は、散歩の予定が入っている。
一緒に散歩をする相手は、嬉しいことに、その子である。
その子とはそれから、ものすごく親しくなり、いつも一緒にいる仲になった。大学卒業後も、2か月に1度は会うぐらいの頻度で、ずっと付き合いが続いている。
でも、お互い、当時はそうだと思わなかった。
こんなに仲良くなるなんて、大学生にもなって、こんな親友ができるなんて、思ってもなかった。
だから、この10年越しの約束を果たせることは、お互いにとって、とても嬉しいことであり、とても特別なことになっている。
そんな彼女は、先日わたしにネックレスを贈ってくれた。
これから先の10年も、わたしにたくさん幸せが訪れるように、わたしがいつも笑顔でいられるように、そして、また10年後に一緒に散歩ができるように、めいっぱい願いを込めて、贈ってくれた。
彼女からのプレゼントには、いつもなにかの「願い」がこめられている。
何か重大なプレゼントがあるときは、必ず「こんな願いをこめたから」と言って、わたしに渡してくれる。
とても、素敵だと思う。
それを使うたびに、彼女からの願いや、パワーをこめてもらったものだと、思い出す。
それだけで、何度勇気をもらったか、わからない。
わたしは、モノに対しての好みが激しく、めんどくさい。
わたしが本当に気に入るものをプレゼントしようと思ったら、誰であれ、相当に骨が折れるだろう。
彼女もそれはよく知っていると思う。
でも、彼女はいつも、わたしのプレゼントを探すのが楽しくて仕方ないらしい。
何時間も悩むこともあるらしいが、必ず「これだ!!!」と思ったものを選んで買うという。
それは、「私の好みに合うかどうか」というよりも、彼女の直感で「絶対にわたしっぽい!!!これしかない!!!」と思ったものなんだそうだ。
そしてそれを選んできた彼女は、いつもとても満足そうだ。
彼女は、彼女が贈りたいものを、全身全霊で選んできて、願いをこめて、贈ってくれている。
それが結果として、わたしの好みにどのくらい合っているかどうかなんて、もう関係ないのだろう。
そしてわたしも、そんなものはもう関係ないのだ。
ただただ、そんな彼女の気持ちと、願いとパワーがこめられたプレゼントが、愛おしくて、大切でたまらないのだ。
大切なんだ、とっても。
来週の約束の日は、だいじにだいじに、楽しんで過ごそう。